この世界の片隅に(完結)
前回は、オコジョの久しぶりの記事でしたが、いかがでしたか?エヴァンゲリオン新劇場版「破」は、私も楽しめました。
さて、今回は、長らく宿題になっていた、こうの史代の「この世界の片隅に」の感想です。この作品の下巻が発売されたのは4月末で、 その日に購入して夢中で読みました。
圧倒されました。 すぐにでも感想が書きたかったのですが、書けませんでした。
あまりにも感情が高ぶってしまい、何から書いてよいのかもわからなくなってしまったのです。
すぐにオコジョにも読ませました。 しかし、オコジョはなかなか読まず、 「早く読んで返せ」と言いつつ1ヶ月が経過、 6月にようやく手元に本が戻ってきました。
そこで、上巻から再び読み返すと、 次から次へと新しい発見がありました。
そして、さまざまな伏線や、最初に読んだ時には気付かなかった作者の隠れたメッセージやらが浮かんできて、 また圧倒されてしまいました。 そして、また感想が書けなくなってしまいました。 こんな経験はついぞありませんでした。
そんなこんなで今ごろになってしまったが、この作品についてあらためて書いてみたいと思います。 中巻を紹介した時に私は、「この作品は「夕凪の街」の被爆者たちが、 そこに至るまでの暮らしの様子を、 戦時下の生活や世相を細かく紹介しながら、 ていねいに描いていく作品なのでは」、と思いました。 たしかに中巻までは、淡々とした流れで、戦時下の暮らしぶりが、 主人公である「すず」の嫁生活を通して描かれていきます。
しかし、中巻の途で遊郭の女性「りん」が登場するあたりから 作品の空気が微妙に変わってきます。 夫「周作」と「りん」の過去に気付き、揺れるすずの心。 実家の兄の戦死、幼なじみの出征、空襲の始まり… そして、下巻で一気に物語は転換します。
呉大空襲に巻き込まれた「すず」は、大切な人と大切な自分の一部を失ってしまいます。 そこで「すず」の世界は一変してしまいます。世界は、「すず」にとって「歪んどる」ものになってしまうのです。 それは「まるで左手で描いた世界のよう」(P60)なのです。
最初に読んだ時は気付きませんでしたが、この回から後の背景は、ひどく歪んで不安定な線で描かれています。それは「すず」に見える「歪んだ」世界そのものであり、(こうの史代は、本当に左手で背景を描いたらしい) そして広島への原爆投下、時をおかずに敗戦となります。 「すず」は多くの失ったものや記憶を抱えながら、戦後を生きはじめるのですが、歪んだ世界は、もう二度と戻らないのでしょうか?
私は、このままこの作品が終わってしまうのだろうか?と思いました。それならそれで、悲劇的な作品として完結するだろう、と思いながら読み進めていました。ところが、作者は最後に、素晴らしい展開を用意していたのです。 多くの大切な人や、大切なものを失った「すず」の「世界」が 再び生き生きと あらわれる瞬間が、ちゃんと用意されていたのです。
ネタバレになるので、詳しい内容は自粛しますが、その最終話で、私は号泣してしまいました。 マンガを読んで号泣し、その感動で圧倒されたのは、本当に久しぶりでした。
こうの史代の出世作である名作「夕凪の街・桜の国」にも感動しましたが、この最終話を読んだ時の感動は、それを超えるものがありました。
素晴らしい!
今年発表されたマンガのNo1なのはもちろんですが、後世に残る名作の誕生といえます。 ぜひ3巻通して読んで欲しいと思います。
実は8月に、家族で広島へ旅行することになっています。原水爆禁止世界大会への参加を兼ねた旅行です。オコジョも、原爆の事に興味を持ち始めているし、良い時期だと思います。呉まで足を伸ばす時間は無さそうですが、この作品と「夕凪の街」を家族で読み返してから 訪れたいと思います。
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